クルシイ。
『隊長?!今どこにいるんですか?!』
無線機から山崎の声が響いた。
「うっせーよ、今・・・ドコだ、ココ」
『隊長ォォ?!早く屯所に帰ってきてくださいよ!』
「わーったよ、じゃーな」
『え?!ちょ、沖田たいちょ・・・』
ブチッ
無線機の電源を切って隊服の中に戻す。
心配性なんだ、山崎は。
俺はピンピンしてるってェのに。
路地裏の暗闇の中をずるずる歩いた。
路地裏から見える大通りの風景をチラとみて屯所まで遠くないことを知った。
これだったらあと10分ぐらいで帰れるだろう。
隊服がへばついて気持ち悪い。
スカーフをはずして頬についた血をぬぐう。
(もう、落ちねェなコリャ)
スカーフをズボンのポケットに入れる。
そして立ち止まった。
「−いつまで隠れてんだィ、出てこいよ」
前を向いたまま刀に手をかける。
「殺気が見え見えなんだよ、出てこねェなら・・・」
「斬るカ?さっきお前が斬った奴みたいに」
声の聞こえてきた方−屋根の上を見ると傘をさした奴が座っていた。
逆光で顔は見えなかったが誰か、なんて声を聞いてすぐわかった。
「何でィ、お前か」
正直驚いた。てっきり先ほど斬ってきた攘夷志士の仲間かと思ってた。
「お前とは何ネ、それで、斬るのカ?私を」
「斬らせてくれんのかィ?」
「ふざけんなヨ、私がお前を斬るアル」
屋根の上からフワリと飛び降りてきた。まるで猫みたいだ。
「お前、また血の臭いするネ。最悪」
「鼻のきく野郎だな、っていうかお前」
さっき『さっきお前が殺した奴みたいに』っていったよな?
そう言うと神楽は眉をしかめた。
「寝れないから外、散歩してたアル。そしたらお前達がドンパチやってたネ、だから見てただけアル」
まるで吐き捨てるかのように言った。
「そんな辛い顔して言うんだったら見なきゃ良かったんじゃねェか」
すると神楽はギロリと俺を見た。
鋭い、眼光。
あぁ、これが夜兎の目。
「・・・動けなかったのヨ。お前が簡単に人を殺すから」
「・・・」
「私もあんな風だったのか、って考えたら動けなかったダケアル。それに」
「それに、何でィ」
「それに、私は化け物なんだ、って思った」
「お前・・・」
くるりと俺に背を向けた。
「お前を見てると苦しいネ」
そう言って闇の中に消えていった。
「・・・何でィ、そりゃ」
苦しい、だと?
何言ってやがる、俺の方が−−−
苦しい