一緒に帰ろう


「神楽ちゃん、一緒に帰りましょう?」

机の中の教科書とか酢昆布の箱とかを鞄に詰め込んでいたら姐御が声をかけてきた。

「ゴメン姐御、私今日、日直アル」
「あら、そうなの残念ね」

ゴメンアル、そう言って姐御が教室から出て行くのを見送る。
(その後をゴリラが追いかけていったけど数秒後、叫び声が聞こえてきた。ご愁傷様。)
人のいなくなったガランとした教室で黒板を綺麗にしてまだ手の付けていなかった日直日誌を開く。
案外記入する項目の多いそれは、私のやる気をくじかせるには十分だった。
毎時間小まめに記入すればよかった、なんて後悔しても、もう遅い。
さて、一時間目は一体なんだったっけ?
確か確か・・・記憶をさかのぼる。あぁ思い出した。確か・・・。

「数学でさァ」
「・・・私が今思い出して書こうとしたのに」
「そりゃすいやせんね」

ガタンと前の椅子を引いてドカリと座る男。

「・・・なんか用アルカ」
「別に?ただ部活の道具を取りに来たら誰かさんが一時間目の授業を思い出せなくて難儀していたみたいでしてね。
ちょっとした親切心でさァ」

ちらっと前の席に当たり前に座る男を見るとわざとらしい、上辺だけの笑みを顔に貼り付けていた。
「その笑い方ムカつくネ」
「そりゃよかった」

もうこいつは無視だ。えぇと、次は理科でその次が古典で次に英語で・・・。
ぴたりと止まった私の手を見て沖田はニヤリと意地の悪い笑いを浮かべた。

「次は、体育ですぜ」
「・・・どーも」

よし、これで後は今日の感想を書くだけだ。

「終わりましたねィ」
「お前早く部活行けヨ、多串君が怒ってるネ」
「起こりすぎて血管切れてくんねーかなァ」

カリカリ、パタン。
よし、出来た。後はこれを銀ちゃんに提出したら完璧だ。

「じゃ、帰りますかィ」
「ハ?」

そう言って沖田はよっこらせ、と椅子から立ち上がって鞄を手に持つ。

「お前部活行かないアルカ」
「いーじゃないですかィ、たまにはサボらせろ」

お前いつもサボってるダロ、とは言わないでおく。

「じゃ一緒に帰るアルカ」
「そうですねィ」
「チャリ後ろ乗せろヨ」
「しょーがねぇや、乗せてやらァ」
「じゃ銀ちゃんに出してくるアル」
「おぅ」

鞄を掴んで職員室までダッシュする。
そしてあいつの待つ駐輪場へ。
そうだ、帰りにアイスを奢らせよう。


Title by Nitro!!!:『両思いの恋』